退職金と企業年金とは?違いと関係をわかりやすく整理

田中 翔太
2026-01-07
退職を考え始めたとき、「退職金」と「企業年金」という言葉を目にする機会が増えます。どちらも会社から支給されるお金として語られることが多いものの、制度の仕組みや位置づけは同じではありません。両者を混同したまま老後の資金計画を立ててしまうと、実際に受け取れる金額や時期について誤解が生じる可能性があります。
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Article Summary

退職金と企業年金の違いがよくわからない…そんな疑問を感じた方へ。制度の仕組みや受け取り方、税金の基本をわかりやすく整理します。

退職金と企業年金

本記事では、退職金と企業年金の違い、両者の関係、受け取り方や税金の考え方について、制度面から整理します。自分の勤務先の制度を理解し、将来の生活設計に役立てるための基礎知識として、ぜひ参考にしてください。

退職金とは何か

退職金とは、会社を退職する際に支給される一時金を指します。支給の有無や金額、計算方法は法律で一律に定められているわけではなく、各企業の就業規則や退職金規程に基づいて決められます。つまり、退職金は法律上の義務ではなく、企業が福利厚生の一環として任意で設けている制度です。

退職金の計算方法は企業によってさまざまですが、一般的には「基本給×勤続年数×支給率」といった形式が用いられます。支給率は退職理由によって変わることが多く、定年退職の場合は高く、自己都合退職の場合は低く設定されるのが通例です。また、懲戒解雇の場合は退職金が支給されない、または大幅に減額されるケースもあります。

退職金の主な特徴

  • 退職時に一括で支給されることが多い
  • 勤続年数や退職理由(定年・自己都合など)が影響する
  • 退職所得として税制上の優遇措置がある

退職金は、長年の勤務に対する功労報奨的な性格を持つとともに、退職後の生活の立ち上げ資金としての意味合いもあります。住宅ローンの完済や、老後資金の基礎部分として活用されることが多いです。

企業年金とは何か

企業年金とは、企業が従業員の老後資金として用意する年金制度です。公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に、企業が任意で導入します。公的年金だけでは老後の生活が十分に賄えないという認識が広がる中、企業年金は「第二の年金」として重要な役割を果たしています。

企業年金は、従業員が退職後も安定した収入を得られるよう、企業が計画的に資金を積み立て、運用する仕組みです。退職金が「点」としての支給であるのに対し、企業年金は「線」として長期にわたり支給される点が特徴的です。

企業年金の主な役割

  • 老後の生活資金を補完する
  • 退職後、一定期間または終身で給付される
  • 一時金として受け取れる場合もある

企業年金は、老後の生活水準を維持するための重要な柱となります。特に、公的年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられてきた経緯もあり、企業年金の有無は老後の生活設計に大きく影響します。

退職金と企業年金の違い

退職金と企業年金は、どちらも企業が提供する退職後の生活保障制度ですが、その性格は明確に異なります。最も大きな違いは、「いつ、どのような形で受け取るか」という点です。

制度上の位置づけの違い

項目退職金企業年金
支給形態主に一時金年金または一時金
目的退職時の資金老後資金の補完
制度各企業の規程年金制度として運営

退職金は「退職時点」で完結する制度であるのに対し、企業年金は「退職後の生活」を見据えた制度という点が大きな違いです。退職金は退職という節目における一時的な資金需要に対応するものであり、企業年金は継続的な生活費を支える仕組みとして設計されています。 また、企業年金は年金資産として別途管理・運用されることが多く、企業の財務状況とは一定程度切り離された形で保全される仕組みが法律で定められています。一方、退職金は企業の内部留保から支払われることが一般的です。

企業年金は退職金に含まれるのか

企業によっては、退職給付制度の一部として企業年金を位置づけているケースがあります。その場合、退職金と企業年金は「まったく別物」ではなく、同じ退職給付の枠組みの中で設計されています。

たとえば、「退職給付総額」として一定の金額が決まっており、その一部を退職時に一時金として支給し、残りを企業年金として分割して支給するという設計がなされていることがあります。この場合、従業員は退職時に「一時金として受け取る割合」と「年金として受け取る割合」を選択できることもあります。

ただし、退職金として一時金で支給される部分と、企業年金として将来受給する部分が分かれていることも多く、扱いは企業ごとに異なります。自分の勤務先がどのような制度設計をしているのか、就業規則や退職金規程、企業年金規約などで確認することが大切です。

企業年金の主な種類

企業年金には、大きく分けて二つの種類があります。それぞれ仕組みが異なり、従業員にとってのリスクや利点も異なります。

確定給付企業年金(DB)

確定給付企業年金は、将来受け取る給付額があらかじめ決まっている制度です。運用責任は企業側にあり、運用がうまくいかなかった場合でも、約束された給付額は保証されます。勤続年数や給与水準に応じて給付額が決まる仕組みが一般的で、従業員にとっては将来の受取額が予測しやすいというメリットがあります。

ただし、企業にとっては運用リスクを負うことになるため、近年は確定拠出年金への移行を進める企業も増えています。特に、低金利環境が続く中で、企業が約束した給付を行うための積立不足が問題となるケースも見られます。

企業型確定拠出年金(企業型DC)

企業型確定拠出年金は、企業が掛金を拠出し、従業員自身が運用する制度です。将来の受取額は運用結果次第で変動するため、従業員が運用リスクを負います。退職時または老後に受給しますが、運用次第では想定以上に増えることもあれば、減ることもあります。

この制度の利点は、従業員が自分のライフプランや投資に対する考え方に応じて、運用商品を選択できる点です。また、転職時には資産を持ち運べる(ポータビリティがある)ため、キャリアの流動性が高い現代において利便性が高いとされています。

一方で、投資に関する知識が不足している場合、適切な運用ができずに資産が目減りするリスクもあります。このため、企業は従業員に対して投資教育を行うことが法律で義務づけられています。

退職金・企業年金の受け取り方

退職金や企業年金を受け取る際には、一時金として受け取るか、年金として受け取るかを選択できることがあります。どちらを選ぶかによって、税金の扱いや老後の資金計画が大きく変わります。

一時金として受け取る場合

退職時にまとまった資金を確保できるため、住宅ローンの返済や大きな支出に充てることができます。また、退職所得控除が適用されるため、税制上有利になるケースが多いです。退職所得控除額は勤続年数が長いほど大きくなるため、長く勤めた人ほど税負担が軽くなる仕組みです。

ただし、一時金として受け取った後は自分で管理・運用する必要があり、計画的に使わないと老後資金が不足するリスクがあります。

年金として受け取る場合

定期的な収入として受給できるため、公的年金と合わせて生活費を計画しやすいというメリットがあります。毎月または毎年一定額が振り込まれるため、使いすぎを防ぎ、安定した生活を送ることができます。

税制面では、年金として受け取る場合は雑所得として扱われ、公的年金等控除の対象となります。ただし、公的年金と合わせた総額によっては、税負担が大きくなることもあるため、受け取り方は慎重に検討する必要があります。

制度によっては、一時金と年金を組み合わせて受け取る選択肢が用意されていることもあります。たとえば、退職時に必要な分だけ一時金として受け取り、残りを年金として受給するといった柔軟な対応が可能な場合もあります。

税金の考え方(基本)

退職金や企業年金を受け取る際の税金は、受け取り方によって大きく異なります。税制上の扱いを理解しておくことは、手取り額を最大化するために重要です。

退職金の税金

退職金は「退職所得」として扱われます。退職所得には、勤続年数に応じた退職所得控除があり、他の所得と分離して課税されるため、税負担が軽減されます。具体的には、勤続年数20年以下の場合は「40万円×勤続年数」、20年を超える場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」が控除額となります。

さらに、控除後の金額の2分の1が課税対象となるため、実質的な税負担はかなり抑えられます。この仕組みは、長年の勤労に対する配慮として設けられています。

企業年金の税金

企業年金を年金形式で受け取る場合は、雑所得として扱われ、公的年金等控除の対象となります。公的年金と合算して控除が適用されるため、受給額によっては税負担が発生します。

一方、企業年金を一時金形式で受け取る場合は、退職所得として扱われることがあります。この場合、退職金と同様の退職所得控除が適用されますが、退職金と企業年金の一時金を同じ年に受け取る場合は、控除額を按分する必要があるため注意が必要です。

受け取り方によって税金の扱いが変わる点は、制度上の重要なポイントです。どちらが有利かは、個々人の所得状況や他の収入源によって異なるため、税理士やファイナンシャルプランナーに相談することをお勧めします。

企業年金がない会社の場合

すべての会社に企業年金制度があるわけではありません。中小企業や転職回数が多い場合、企業年金が用意されていないケースもあります。厚生労働省の調査によると、企業年金制度を導入している企業の割合は、大企業ほど高く、中小企業では低い傾向があります。

企業年金がない場合でも、退職金のみ支給される企業もあれば、そもそも退職金制度自体がない企業もあります。特に、新興企業やベンチャー企業では、退職金制度を設けていないケースが少なくありません。

企業年金がない場合、老後資金は公的年金と自助努力に頼ることになります。このような場合、個人型確定拠出年金(iDeCo)やつみたてNISAなど、個人で利用できる制度を活用して、計画的に老後資金を準備することが重要です。会社ごとの制度確認が重要になるのは、このためです。

その他の退職給付制度

退職金や企業年金以外にも、企業が提供する退職給付制度にはいくつかの種類があります。たとえば、中小企業退職金共済(中退共)は、中小企業が加入できる社外積立型の退職金制度で、国の助成を受けられるメリットがあります。

また、一部の企業では、前払い退職金制度を導入しているケースもあります。これは、退職時に一括で支給する代わりに、毎月の給与に上乗せして支給する制度です。従業員にとっては早期に資金を受け取れる利点がありますが、税制上の優遇措置は受けられないため、手取り額が減る可能性があります。

まとめ:退職金と企業年金を理解するために

退職金と企業年金は制度の目的と仕組みが異なります。退職金は退職時の一時的な資金需要に対応するものであり、企業年金は老後の継続的な生活を支える仕組みです。企業年金は退職給付の一部として設計されることが多く、両者は密接に関連しています。

受け取り方や税金の扱いは制度ごとに異なるため、自分の勤務先の制度を詳しく確認することが不可欠です。就業規則や退職金規程、企業年金規約などの資料を読み込み、不明な点は人事部門に問い合わせることをお勧めします。

退職時や老後の資金を考えるうえで、まずは自分の勤務先の制度を正しく把握することが、理解の第一歩となります。その上で、公的年金や個人の資産形成も含めた総合的な老後設計を行うことが、安心した老後生活につながります。

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